REBLANCA FILM《リブランカ フィルム》
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2023-03-29 (wed)
リブラン家の人々 白石美紗子編
節目の3月
「患者はあなたの心配を解消するための存在ではない」

日経電子版の記事に、
写真家で今も血液の癌と戦っている幡野広志さんの記事の一文が目に入った。

この一文だけを抜粋すると少々きつい言い方に聞こえるが
私にとっては心当たりがあっただけにドキッとしてしまった。

主人が亡くなる前、
最後の旅行になるかもしれないと家族皆で温泉旅行を計画していた。

旅行前に急に体調が悪くなり、
自宅の近くで点滴をしてもらっている先生に血液の数値をみてもらうことになったのだが
結果を見た先生は曇った表情で、
「かなり数値が良くないですし、旅行の途中で、最悪の事態も考えられるかもしれません。今こうして座っているのもかなりしんどいはずです」
と。

主人は一切弱音を吐かない人だったし、見た目にはそんなひどい状態には見えず
私からしたら、そんな大袈裟な・・・って思いながらも
心の中では動揺しているようなそんな状態でした。

旅行にはどうしても連れて行きたい。
きっと旅行に行けることで主人が喜ぶものだと思っていた私は
急遽、車で30分ほどのかかりつけの別の病院へ
電話をして病状を伝えてすぐに向かった。
病院に到着し、主人を車椅子に乗せて、人をかき分けて待ち時間を待って先生に診察してもらったが
答えは「今はできることがありません」という事でした。

私「え?・・・いやいやしんどい中病院までせっかくきたんだし、何かできる処置がないんですか?」
と食い下がる私に先生は
「処置することで体力も使う、今の状態を考えると手立てはないですね・・」と一刀両断。

しんどくてうなだれるように車椅子に座っていた主人から
「これで満足した?」
と言われた。

主人のためにと思ってしていたことが
自分の不安を取り除くためにしていたことだったのかと思うと、
世にも奇妙な物語の最後にタモさんに言われてハッとするあの場面を思い出した。



私はせっかちで、目的に一直線に走りがちなので
焦ってゴールばかり見すぎると
目の前にある、「小さいけど大切なこと」を見失うことがある。

だからこの時の出来事は私の戒めになっている。

時には、周りの景色を眺めがら寄り道をして歩くことも大事だと
この歳でようやく気が付く・・

年を重ねていくということは
焦らずゆっくり歩けるようになることなのかもしれない。


3月無事に小学校を卒業した娘の節目に
写真や動画を見ながら振り返りいろんな思いが込み上げた
桜がそろそろ満開になりそうな今日この頃です。